前を向くために Part3

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人生、前向きに生きたいもの。でも、何かと後ろ向きになりがちな自分がいるのです。前向きに生きるには、まず前を向かなければなりませぬ。じゃあ前を向くためにはどうしたらいいの?と日々悩んどります。これはその記録の一部です。

SONY NW-ZX1

とても素晴らしい携帯音楽プレーヤーが発売された。ウォークマンという、あまりにも有名な製品系列の最上級モデルとして、ソニーから 2013/12/07 に発売になった、NW-ZX1 である。これが実に素晴らしい出来なので、レビュー記事を書くことにした。


NW-ZX1 ラインアップ
NW-ZX1 製品詳細

これは、ソニーが繰り出した、アップルに対する挑戦の一つの頂点の形だと、僕は見た。そしてその挑戦は、今のところは成功しているようだ。それは、以下の価格.comの記事に現れている通り。実際、発売から1週間経った現時点でも NW-ZX1 は売れ筋ランキングと注目ランキングで No.1 である。


ソニー、ハイレゾ対応ウォークマンの最上位機種「NW-ZX1」が売れ筋ランキング1位を獲得!アクセス数は発表時の7倍に達し、「最高峰のポータブルオーディオプレーヤー」との評価も
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7万円を超える最高級ミュージックプレーヤーが売れ筋1位というのは、なかなか珍しいことではないだろうか。2位の iPod touch 32GB は2万円台である。64GB は9位とあまり元気が無い。ソニーの F887 64GB の方が5位で上である。実はこの場所はアップルとソニーの独壇場で、現時点では30位になってようやくトランセンドがはいってくるまで、29台全部、アップルとソニーがしのぎを削っているのである。一応ライバルと目されるアイリバーの AK-120 128GB は、急遽発表された製品だが、まだ発売されて日が浅く、37位と出遅れている。まあ ZX1 が出てしまった今となっては、あまり意味があるとは思えないし価格も倍近くするので勝負にならないと思うのだが。

さて、このモデルの第一の特徴は、何と言っても、今までありそうでなかった、128GBというその容量である。iPod classic はハードディスクなので 160GB があったりするが、フラッシュストレージのプレーヤーでは、今までは 64GB が最大だったのである。アップルから iPhone 5s/5c にあわせて iPod touch の 128GB が発売されるとの噂もあったが、結局出なかったので、僕はとってもガッカリした。今のところこの容量を求めたら、アイリバーが急遽出したものの、日本市場においてはこの ZX1 一択と言ってよい。

この容量は、だてに大きいのではない。ハイレゾ対応ともなれば、必然的な結果なのである。まだ小さいくらいだ。実際、僕の音楽ライブラリは、ZX1 にははいりきらず、だいぶ多くが iPhone/iPad mini に入れざるを得ないことになって、ZX1 をもう1台か買おうか、それとも iPhone/iPod/iPad からデジタル接続できるし ZX1 もデジタル接続できるソニーのポータブルヘッドフォンアンプPHA-2を買おうか、迷っているのである…。なぜそうなるかというと、ハイレゾともなれば、AAC でロッシーな圧縮をするというのは、ちょっとあり得ない。ハイレゾの意味があまり無くなるからである。僕は Mac なので Apple Lossless (ALAC) だが、Windows ユーザなら一般的には FLAC であろう。ネットで販売されているハイレゾ音源もみんな FLAC だ。ALAC にしろ FLAC にしろ、ロスレス圧縮でハイレゾにも対応しているが、圧縮率はだいたい半分というところ。ロスレス圧縮では、AAC や MP3 のようなロッシーな圧縮率は難しいのだ。これは何もオーディオ信号に限ったことではなく、静止画像でもそうだし、動画でもそうだ。一般に、ロスレスな圧縮は圧縮率が低いものなのである。しかも、ハイレゾ音源は、元々ファイルサイズが大きいのである。サンプリング周波数が倍になれば、自動的にファイルサイズも倍になる。サンプリングデプスが大きくなれば、それに比例してファイルサイズも大きくなる。CD で一般的な 44.1kHz/16bit が 96kHz/24bit になると、ファイルサイズは3倍を超える。なので、どうしても入れ物の容量を増やさざるを得ない。必然的な結果というのは、そういうことなのである。

僕としては、ハイレゾでない普通の CD の音も ALAC でやっていたので、この時点でもう 64GB は足りなかった。だから 128GB モデルは、ずっと待ち続けていたのである。それがやっと発売になるとニュースで見て、どんなに嬉しかったか。これが飛びつかずにいられようか。しかも何だかソニーは相当気合いを入れてきている。音も良さそうだ。僕はもちろん、発売前に予約し、発売日当日に入手した。2台にしようか迷った末、まずは1台買ってみて、良ければまた考えようということで我慢したくらいである…iPhone 64GB も iPad mini Retina 128GB もあるので、とりあえず今のところはそれで足りるから…でも、まだ ALAC にしていない CD がたくさんあるので、それらを全部 AAC から ALAC にしたら、足りなくなることになっている。そのとき、どうするか、PHA-2 にするか ZX1 をもう1台買うか、今からもう非常に迷っているのである…。

容量以外には、音質の良さが特筆的である。これはもう聞いてもらうしかないのだが、聞けば納得すること間違いなしだと思う。どういう音か、一言で言えば、『情報量の多い音』だろうか。とにかく良く鳴るのである。しかし嫌みは無い。ヘッドフォンやイヤフォンの特性を素直にそのまま引き出す音でもある。ちなみに、僕は、家では SONY MDR-Z1000 で、外では Sure SE535LTD で聴いている。どちらもかなり以前からのお気に入り。この2つ、全く違う音を出すのがとても面白い。SE535LTD の方が明るく元気に鳴るので、街歩きには向いている(イヤフォンだし)。家でじっくり聴くなら MDR-Z1000 のスタジオモニターがふさわしい。低音もベースの4弦の開放までよく出ている。元々音楽製作用に買ったヘッドフォンだが、聴くのにも使っている。僕は昔から、コピーをするせいか、分析的に音楽を聴く。それにぴったりなヘッドフォンだと思う。ヘッドフォンのことはそのくらいにしておいて、このようにヘッドフォン/イヤフォンの特性をそのまま引き出すというのも、ZX1 の特徴だと思う。素直なのだ。だから何色にも染められると言えるかもしれない。お気に入りのヘッドフォン/イヤフォンがあるのなら、その音を鳴らしてくれると思う。ぜひ店頭で試してみて欲しい。

ソニーの音楽アプリには、色々と機能があるのだが、電池の持ちが心配なので、今は基本的にはノーマルで聴いている。もう少しして、電池の減り具合がつかめてきたら、いろいろ試してみようと思っているが、一つだけ触れておくと、疑似サラウンドがある。これはどういうわけか製品紹介ページでは紹介されていないような気がするのだが、これがなかなかいいのである。モードは、スタジオ、クラブ、コンサートホール、マトリックスのモードがあり、それぞれ微妙に違う聞こえ方をするけれども、音質が悪くなるということがないのが素晴らしい。あと、5バンド+Clear Bass のグラフィックイコライザーも付いているので、Android だからいろいろな音楽アプリを試すこともできるけれども、必要性は感じない。iPhone ではツタヤ+Dolby のサラウンドアプリや DENON Audio アプリを使ったりしていたが。そのうち試してみるかもしれないが。

ちなみに、アプリの動作は軽快だ。Android 端末として使うつもりはまったくないが、そのように使っても問題は無いだろう。回線は WiFi を使えばよいのだし、外なら iPhoneテザリングに繋げれば良い。ただ、アプリ用に使えるストレージが 1GB なので、あまりあれこれは入れられないだろう。入れるとすれば、音楽アプリくらいだろう。僕の場合、iPhoneiPad mini も常時持ち歩いているので、音楽専用でいいのだ、ZX1 は。どうしても Android が必要なら、Nexus7 もあるのだし。こっちはタブレットだから、ずっと使い勝手が良い。必要ないので使ってないだけで。

と、まあ、ZX1 はベタ褒めなのだけれど、問題があるとすれば、たぶん電池がどのくらい持つのかという点であると思う。普段の通勤なら朝晩の往復だけだけれども、どこかに出かけるとなると、1日中朝から晩まで聴くこともある。それに耐えられるだけ電池が持つかどうか。それはやってみなければわからない。

さて、最初のほうで、これはアップルに対する挑戦だということを書いた。アップルは、iPod という、それまで誰も考えなかった、ハードディスクを外に持ち出す、カートリッジだのディスクだのの交換は無い、というものすごく潔い製品を世に送り出し、音楽好きの音楽の聞き方をがらりと変えてしまったのは、周知の通りである。元々、音楽を外に持ち出すというコンセプトは、ソニーウォークマンでやり出したことだ。それ以降、音源がデジタルになり、持ち出すプレーヤーも MP3 プレーヤーに変わったが、みんな、メディアの交換ということで聴ける音楽を増やしていた。僕もディスクウォークマンを持っていたし、その後、シングル CD サイズのポータブルプレーヤーにまで行き着いていた。そういうところに、アップルは『交換無し、ハードディスクの 4GB だけ』というコンセプトで iPod を出してきた。これが爆発的にヒットした。僕も初代 iPod 4GB を買ったクチである。それからのアップルの快進撃は知っての通り。携帯音楽プレーヤーと言えば iPod が定番になってしまった。街を歩けば、イヤフォンをしている人のほとんどは iPod/iPhone の白いイヤフォンである。あんなイヤフォン、ちっとも良い音しないのに…。そんな中で、やっぱり街でも良い音で聴きたいという人が出てくるのは当然である。そういう人に支持されてきたのが、他ならぬウォークマンであるというのは、知っている人なら知っている。それは如実に価格.com の売れ筋ランキングに現れているとおりだ。そういう市場に、ソニーが ZX1 を出した意味は大きいと思う。売れ筋ランキングで1位になったのは、いかに多くの人が良い音、沢山はいるプレーヤーを待ち焦がれていたかの証である。僕と同じような人がたくさんいたということだ。みんな、待ち焦がれていた。そこに、ソニーのマインドが応えた。そういうことだと思う。これはソニーが良く頑張ったと素直に賞賛したい。ソニーの技術者は、部品に妥協すること無く、ちょっと出っ張りができてしまうことにも妥協せず、高音質を追求した。詳しいことはソニーの製品紹介ページを見て欲しい。なかなか気合いが入った製品である。

当分の間、僕は ZX1 を使い続けるだろう。もう iPod/iPhone のイヤフォン直差しには戻れない。アップルの出番があるとしたら、PHA-2 が出番になるときだ。PHA-2 を買うか、あるいは ZX1 をもう1台買うかもしれない。だけど、ソニーには、これからももっと良い製品を開発し続け、出して欲しい。まずはストレージの 256GB 化とバッテリーの容量アップだろう。後ろの出っ張りが無くなり、全面的に分厚くなってもかまわないから、この2つはすぐにもやって欲しいと思う。対応音源としては、ハイレゾの次はサラウンド音源ではないだろうか。疑似サラウンドではなく、本物の 5.1ch サラウンド音源を鳴らせるようにしてくれればありがたい。おそらくは光デジタル出力ジャック付きということになるだろうが…どこから音源を持ってくるのかという話はあるけれども。mora で販売してもいいと思う。これができるようになれば、もう無敵だと思うのだが。あとは、地道だけれども PHA-2 レベルのポータブルアンプの内蔵化のような、さらなる音質アップだろうか。おそらく、僕が買い替えるとしたら、256GB モデルが出たときだという気がする。iPod も、容量が大きくなる度に、そしてボディサイズが小さくなる度に、mini から nano へと買い替えてきた歴史がある。ソニーには、ボディは小さくしなくても良いから、ポータブルアンプを内蔵するという方向で考えてもらいたいと切に願う。Android アプリは、サードパーティに任せてもいいような気がする。ソニーはハードウェアメーカーとして、音の追求をしてほしいし、利便性を高めてほしい。それはアプリ開発者には絶対にできないことだから。アップルから、音質追求の iPod が出れば、面白いことになるかもしれない…。